今宵、月の照らす街で
“陰”の者を挟むように、明奈と2方向から息を切らしながら一気に屋上に駆け上がる。


視界に入っている筈の成二の姿に何も反応することなく、不審者は負の気…陰を散らし続けていた。


「政都宮内庁だ。…あんた、何をしている」


言葉に反応して、黒いマントに被われた太極印の仮面が初めてこちらを見た。


その不審者は何を思ったのか、手を大きく広げ、頭を垂れる。


「伏せなさい!!」


同時に明奈が物凄い剣幕で怒鳴り、不審者は祈るように手を合わせ、大きな音を立てた。


刹那、空気がよじれる様な、変な違和感に全身が警告を発し………


一瞬の、永遠の様でもある漆黒の闇が、白日の下を染めていった…。
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