今宵、月の照らす街で
「室長!新たな霊的特異点を観測しました!場所は……っ!」


あずさの声が詰まる。


「政都大附属病院…特別棟…」


特別棟。


その棟は…対策室の重傷者の治療を目的とする場所。


そしてその重傷者は不幸かただ一人…。


「紘子ッ!!?」


一瞬で悪寒が全身を駆け回る、最悪な感覚が多香子を支配する。


何か考えなきゃいけないのに、一度にたくさんの考えが頭の中を埋めた。


―――余計なコトは考えたくないのに…


あずさが多香子を呼ぶが、考えがまとまらない。


―――早く考えなきゃ…また家族が脅威に曝される…


「室長!!特異点に変化アリです…新たに正体不明の霊圧を感知しました!!」


変化と言う言葉に、多香子は吉報である事を願った。


そして、見せられた霊圧分布図に拡がる、特徴的な橙色の波長と、高い霊圧値。


それは、小龍沢に残された古に記された文献通りの波長。


「…如月家?」
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