奏。‐カナデ‐





片瀬を見ていると、ふと片瀬がこちらを向く。
しっかりと絡まった視線がなんだか恥ずかしくて、すぐに逸らしてしまった。

やば。
あからさまに逸らしたら変だよね。気をつけよう・・・。

「おーい咲弥、集合だってよ~」

「あっうん~」

奈々に呼ばれて生徒が集まっているところに小走りで向かう。


―男子が汗流して走ってるってカッコイイよね―

はい。
その通りですよ奈々さん。

練習中、何度片瀬を見たことか。
好きな人は、やっぱカッコイイよね。


ずっと見ていると気づく。
ふとしたときのしぐさとか、クセとか。

そんな小さなことさえ、愛しく思えるんだよ。















・・・・あたしはまだ、自分のことさえちゃんと分かってなかったことに気づいてなかった。

本当、バカだった。
幸せは近いと絶対に気づかない。

離れて初めて、本気で欲しいと感じる。

思いの深さを、知る。


近くにあるうちに手を伸ばさなかったことを、絶対に後悔するときが来るんだ。





< 27 / 39 >

この作品をシェア

pagetop