奏。‐カナデ‐

第2音楽室






「咲弥ちゃん・・・音、出ないね・・・」

先輩のこの苦笑いを見たのは、入部して何度目だろう。

あからさまに落ち込むあたしを、先輩は一生懸命慰めてくれるけど音が出ないのには変わりは無い。


今日も、サックスの音が出なかった。

中学に入って即入部した吹奏楽部。

同じサックスパートの1年生は、どんどん上手くなって音も出てるのにあたしだけ初めてソプラノサックスを吹いたときから1ヶ月、1度も音が出ない。



今日も部活が終わって、あたしだけ楽器を家に持って帰る。
家でも、もちろん練習はしている。だけどこの1ヶ月間、音が出てくれたことは1度もない。


「はぁ~」

1人で靴箱まで歩いて行っているとき、ふと第2音楽室からピアノの音が聞こえた。
第2音楽室は、少し広い教室にピアノが1台置いてあるだけの普段はあまり使わない教室。

こんな時間に、練習?


音楽室に近づいていくたび、そのピアノが奏でる曲はかなり高度な曲のもの。

「誰やろう。先生かな・・・」


好奇心で音楽室まで来て、そっと扉を開けた。







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