涙の欠片
何故、この女だけ学校に来ているのか。
同じクラスなだけにあって、一馬はこの女がアイツらと同伴じゃないって事を分かってたから。
だから来て居るんだと思った。
「あのさ、頭あげてよ?あたしそう言うの好きじゃない」
そう言ったあたしに戸惑いながら「本当にごめんなさい」と女は頭を上げる。
「もういいよ。名前何て言うの?」
「えっ、あっ…沙織」
「そう…」
あたしは一言だけ告げて教室に入り、自分の席に腰を下ろす。
名前を聞いてどうするって事もないけど、ただ名前くらいは知っとこうと思った。
あたしは机の中から教科書を取り出し、隣に目を向ける。
机に顔を伏せている一馬の頭にポンッと教科書で叩く。
「あ?」
不機嫌そうに顔を上げる一馬に「返す」そう言って一馬の机に教科書を置いた。
「いらね」
あたしの置いた教科書を手に取りポイっとあたしの机に一馬は投げ捨てる。
落ちそうになった教科書を手で押さえ一馬に目を向ける。
「だって、これ一馬のじゃん」
「俺あるよ。職員室から余りもんパクってきたし…。ってか別に必要ねぇけどな」
一馬はそう言ってうっすら笑い、また机に顔を伏せた。
周りの人間が動くたび、あたしの心は闇の中から抜け出しそうな気がした。
“一人で考え込むほど人間は強くねぇんだよ”
リュウが言ってた言葉に改めて思い知らされた。