涙の欠片
時間が経ち、洗濯し終えた服をベランダに干し終えると「恵梨菜、行くぞ」とリュウの声が脱衣所から聞こえた。
「ちょっと待ってよ」
「あ?まだ何かあんのかよ」
脱衣所から出て来たリュウはいつも通りに髪をセットし、テーブルの上にあったタバコと財布と携帯をポケットに突っ込む。
「今日は帰るから昨日買ったやつ車に乗せとくの」
「あ?そんな事、帰ってきてからすればいーだろ」
リュウにそう言われてハッとした。
何も今、そんな事をしなくてもいいと思った。
昨日、浮かれすぎて袋から出していて床に置いてある服を掴んで「そっか」と呟き手を止めた。
「行くぞ」
そう言って足を進めて行くリュウ。あたしはスクール鞄を抱えたまま靴を履き玄関を飛び出した。
車に乗り込んですぐ微かに音が聞こえ、あたしはチラッとリュウに目を向けた。
……電話。
あたしの音じゃない。
リュウはエンジンをかけようとする手を止め、ズボンの中から携帯を取り出す。
2ッ折りの携帯をパカッと開けたと思ったら、リュウはすぐにパチンと閉じ携帯をポケットに入れた。