涙の欠片

ずっと握り締めるあたしに「さっさと見ろよ」とリュウはダルそうに言ってタバコを咥える。


今まで気になって気になってしてたけど一度もリュウの携帯なんて見た事がなかった。

手の平にある携帯を眺めていると「見ねぇのか?」と言ったリュウの言葉を聞いた途端、あたしの手は動いていた。


携帯をパカッと開けて着信履歴を見る。

そこに映しだされるのは名前のない11ケタの番号が数々。

その番号の横に小さく“不在”と言う文字が映しだされていた。


次のページを開いても同じで時たま翔平、徹、知らない男の名前が交ざっていたけれどリュウは知らない番号には出ていなかった。


「名前入れてねぇからマジ誰だか分かんねぇ。そんな気になんだったらメールも見とけよ」


そう言ったリュウにチラッと目を向けるとリュウは煙を天井に向けて吐き出した。

そう言われた事に少し躊躇ったが、あたしはリュウの言われるがままに受信BOXを開いた。

さすがに文章の所までは開けなかったけど、着信と同様あたしと翔平くらいの名前しかなかった。



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