涙の終りに ~my first love~

すれ違う心

3学期が始まったある日、ポツンと真子から手紙がきた。
この時は珍しく真子が自ら持ってきた。

そして「必ず一人で読んでね」と何時になく真剣な眼差しだった。

「今さら何を言ってんだよ、手紙はいつも一人で読んでるに決まってるじゃん」っと思いながら授業が始まってすぐに手紙を開けると、そこには
「生理が遅れてる」と書いてあった。

一瞬頭が真っ白なり授業中にも関わらず”はぁ”と声を上げていた。
しかしすぐにそんなはずはないと思った。
だってオレ達は子供が出来るような事はやっていない。裸でキスして抱き合うぐらいで子供が出来るはずもない。

彼女には分からないのかも知れないが男のオレにははっきりそれが分かっていた。
想像妊娠ってやつかなと思い、取りあえず授業が終わるのを待って真子のところに行った。
そして真子に会うと二人きりになれる場所に連れていき、
「心配ないよ、妊娠は絶対ないから」とオレは元気づける思いも込めて彼女にそう言った。
だけど元気づける意味で言ったその言葉は激しく彼女のプライドを傷つけていた。
受け取り方によっては無責任に彼女を置き去りにし、オレだけ逃げようとしているようにも解釈できる。
それは彼女の表情からも読み取れた。

慌てて逃げる意味じゃない、決して真子を一人にはしないからと説明したが時すでに遅しであった。オレの真意を彼女に伝えるには休憩時間ではあまりにも短すぎて言葉足らずのまま別れてしまった。
この日はオレの方から一緒に帰ろうと真子を誘った。
帰り道でもひたすら現実逃避じゃない、だけど妊娠もしていないとありったけの言葉で伝えたが無理だった。

この時、何故オレは「射精もしてないのに妊娠するわけない」とはっきり言わなかったと思う?

それを言ってしまう方が逆に彼女を傷付けてしまうと思っていた。
あの琥珀色の甘い時間の中で終わったフリをしていたのかと思われるのも嫌だった。

だから妊娠するわけがない決定的な理由を言わなかった。

それはオレなりの真子に対する思いやりでもあった。
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