涙の終りに ~my first love~
通りすがりの恋
そのキズを見ないふり、気付かないふりしながら交際を続けるのも限界に達していたのかも知れない。

でもいくら傷つき疲れ果てて倒れてもオレから別れを口にする事はない。

だから不思議と二人の関係が終わっても辛くはなかった。背負っていた重い荷物を降ろし胸にポカリと穴が空いた感じだった。
その重い荷物を降ろした開放感から無気力状態になり次の日学校を休んだ。
学校を休んだといってもどこかに出掛ける訳でもなく、一日中部屋でボーっとしながら
永ちゃんの「通りすがりの恋」って曲の”追いかける事も呼び戻す事もしないぜ”の部分を自分に重ねながら繰り返し聞いていた。
クールス、キャロル、そして永ちゃんの別れの曲ばかり選曲して聞きながら一日を過ごしていると、学校帰りの勝史がワンカップを持ってオレの部屋に来てくれた。

繰り返すけど勝史は本当にいいヤツだった。

勉強をして大学を出て大手の企業に就職し、エリートコースを進むヤツとは歩む道は全く違ってしまったけど死ぬまでには再会して酒でも飲みたいものだ。

勝史は真子にふられたオレが学校を休んで落ち込んでいると思ったらしく、
「元気出せよ」とワンカップをくれた。
中学生のくせに酒なんぞ飲んでと自分の過去ながら思うが、あの時は心も身体も大人のつもりだった。
ちなみに家の親は酒タバコには寛大で「コソコソやるな、堂々とやれ」といったタイプで校則に違反するような制服でも一切注意をしなかった。親父は幼くして両親を亡くし苦労をしながら育ってきたため自分の息子は自由にさせるといった信念みたいなものを持っていた。

勝史に礼を言って一人になり、ワンカップに口をつけると涙が出た。

あの時のワンカップの味は今でも忘れられない。
アルコールを口に含み目を閉じると真子の笑顔が浮かび、一人になった事を痛感した。

初恋、交際、そして失恋。
オレが主役の短い映画のような恋物語は終わった。

だが立ち直りも早かった。
ワンカップを飲み干すとベットと机の位置を入れ替え簡単な部屋の模様替えをした。

真子と甘い琥珀色の時間を過ごしたあのままのレイアウトでは、
いつまでも彼女の事を思い出し新しい明日を迎えられないような気がして嫌だった。


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