涙の終りに ~my first love~
ヒロ
「ふん警察か・・・ 何も悪い事してねぇよ」と
シカトをキメてそのまま歩き始めると停車中のパトカーの中から降りてきた警官に
「こんな時間に何をしている?」と聞かれ視線を合わせずオレは
「手紙を入れに来た」と短く返すと、下から覗き込むように警官は
「こんな時間にか?」と続け、
「そんな事よりおまえどう見ても未成年だし、深夜徘徊だろ!」と
補導されパトカー乗せられてしまった。

車内で住所氏名など細かく聞かれた後、取り合えず深夜だからという事で嫌がるオレを家まで送る事になり、歩いて僅か数分の距離をパトカーの送迎で帰った。
そして家の前まで来ると
「こんな時間に出歩いちゃいけないぞ」と
念を押すように言いながら助手席の警官がドアを開けてくれ、
無言のままオレが降りようとすると今度は運転手側の警官がルームミラー越しに
こちらを見つめ、
「私達も忙しいし、御両親も寝ているだろうから今日のところはこのまま帰る」と
今回だけは多めに見るみたいなニュアンスで物を言った。

背伸びをしながらゆっくり歩き玄関口で振り返ると忙しいはずのパトカーは停車したままでこちらを監視しており、
オレが家に入るところまでしっかり見届けてから静かに走り去って行った。

部屋に入ってベットの上で大の字になると今日は本当に色々な事があり、最後は補導されて一日が終わるシナリオかと思うと女神も手が込んでるなと思った。

そして目を閉じると聖子の笑顔ばかりが浮かび、出来る事なら昨日のこの時間に戻りたいと心から思った。

頭の中で思っているのは何故か捨てたはずの聖子の事ばかりで、
これから再度始まる真子との事は考えもせず、むしろまた真子には振り回されるんだろうなと期待もしてなかった。

期待しない代わりにオレはこんな犠牲を払ってまで真子とつき合うんだから、
今度こそは”自分の言動に責任を持てよ”みたいな気持ちだった。

「頼むぜベイビー」じゃないけど真子にはそんな賠償的な思いを抱きながら何度か寝返りを打っている内にいつの間にか寝てしまい、目が覚めた時には時計の針が仲良く重なり合おうとする正午だった。
なんの予定もない暇な日曜だけど真子を誘う気にはなれず、一人で街まで出て
進学せずに就職したヒロが勤めるドクロマークの店まで行った。

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