涙の終りに ~my first love~
捨てたはずの恋
「この天使の置き物ってずっとこのままだったの? 聖子も見たんじゃない?」と言ってしまった後で真子は「あっ!」っという表情でこちらを見た。
思わずオレは「おまえ聖子の事知ってたの?」と言葉を返し、
さらに心の中では「聖子との事を知っててあの手紙をよこしたのか?」と続けていた。

慌てた真子は何度も瞬きしながら「この前マミから聞いたの」っと秒殺の嘘をついた。

オレと聖子の事はマミはおろか勝史も知らない事だ。
隠すつもりはなかったけど文通をしている事がいつも心のどこかに引っかかり、
話せずにいると交際そのものが終わってしまった感じだった。
オレは”目は口ほどに物を言う”じゃないけど、
「こいつ嘘を言いやがったな!」と睨みつけるようなキツい目をして、乱暴に真子を引き寄せキスをした。

キスで口を塞ぎ、それ以上彼女の嘘を聞きたくなかった。

数年後に再会した真子はこの時の事を振り返り、
「ユウジに殴られる」と思ったと語っていた。

キスをしながら右手で激しくバストを掴み、その指先から乳房を通してオレの感情は真子の心に伝わった。

唇が離れた後、「オレ達の事を一番良く知っているのはこのストーブかも知れない」と話題を変えた。

琥珀色の暖かいストーブの灯かりは、少しだけ大人になった二人を照らしていた。
不思議とこの灯かりに照らされていると嘘やわだかまりをすべて掻き消され、
心を奥を見透かされているような気持ちになった。

お互いに言葉を無くし、ボンヤリとストーブの灯かりに見とれていたけど、おそらく考えている事は同じだった。

はじめて唇を重ねた時の事、そしてはじめて裸になり重なり合った事などが浮かんでは消えていった。

肩を並べながら二人で過去の想い出を語り合い、すっかり日が沈んだ頃に真子を送って帰った。

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