涙の終りに ~my first love~
裏切りの街角
ケンカの原因は、はっきり言ってオレにあったと思う。
でもそんなのお構いなしでオレは八つ当たりの場所を見付けたかの如く暴れまくった。

いきなり街に出ようぜと誘われ、その挙げ句に喧嘩にまでつき合わされている
進一には悪かったけど、元々お祭り騒ぎや喧嘩好きな一面を持ち合わせている男だった。

殴り合いになってすぐに一人が逃げたため、結局二対二の喧嘩になると、
あっさり決着がついてしまい、進一は物足りない様子だった。
捨てゼリフを吐きその場を後にしながら、オレは進一に
「ゴメンな」と言うと「ユウジ、何かあったんじゃねぇの」と
逆に心配してくれ「オレでよかったら話せよ」と拳を固めながら軽いステップを踏み
ボクサーを気取って見せていた。

進一の気持ちはすごく嬉しかったけど、その理由ってのが
「女からデートをドタキャンされてイラついている」なんて言えるはずもないなと思いながら何気なく後ろを振り返ると、逃げたと思った一人が大勢の仲間を連れて追いかけて来ているのに気付き、

「ヤバイ!逃げろ!」と叫びながらオレ達は二手に分かれて逃げた。

振り返ると進一は手際よくタクシーに乗り込み、こっちに来いと手招きをしていた。
だけど後戻りしている暇などないと思ったオレは進一だけでも逃がそうと思い、
逆方向にそのまま走って逃げ、人通りの多い商店街に紛れ込もうと足を踏み入れたその時、信じられない光景を目の当たりした。

なんとそこにはオレとのデートをドタキャンした真子がいた。

真子は人混みの中を年上の女性と二人で楽しそうに笑いながら、正面からこちらに向かって歩いてきた。

オレは逃げる事も忘れこちらに向かって歩いてくる真子を愕然と見つめていた。

そしてオレとすれ違う直前に二人の視線がピタリと合い、その瞬間彼女は”ハッ”と息を呑むしぐさを見せた。

オレはこの時かすかに「真子・・・」と呟いていた。

多分その声は真子には届いていなかったと思う。
すぐに視線をそらした真子は何事もなかったようにオレの横を通りぬけて行き、
すれ違う瞬間の横顔は
他人よりも冷たかった。

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