涙の終りに ~my first love~
成人式
そんな夢を繰り返し見る日々を過ごしながら、
やがてオレも成人式を迎える頃となっていた。
18ってやっぱりまだ子供ってイメージがあって19はちょうどその真ん中。
だけどハタチは違うと
オレはイメージしていた。
二十歳はやはり大人で立派な社会人。
それで次は結婚か・・・ なんて思っていた。

オレはその成人式の当日なら真子に逢えると思い、捜しても逢えないムダな労力を使うより、二十歳を迎える男女が集う式場に照準を合わせ真子を待つ事にした。

その日になれば絶対に逢えるなんて保証はどこにもないけど、そうでも思わない限り
悪夢にうなされ続けるだけの毎日では身体の方が持たなかった。

そして成人式が近づくにつれ昔の悪友から連絡が入るようになり、
オレは十数名の仲間とつるんで式場に行く事になっていた。

当日は雲ひとつない快晴だった。

式場に続く沿道には振袖で綺麗に着飾った女達で溢れ、とても華やかだった。
良く見ればどこか見覚えのある顔ばかりなんだけど、
みんな大人の女性に成長しており学生時代とは違って色気を放っていた。

あんな事になってなければ、聖子も振袖姿でここに居るんだろうなと思うと切なかった。

そんな中、ひときわ異彩を放つ男がいた。
今時の派手男のように紋付袴などが流行ってなかった時代に
ド派手なスーツで身を包み右の拳を血で赤く染めた男が一人、
式場門の前で立っており、新成人で混み合う門の前は、
その男の周囲だけがポツンとした異様な空間になっていた。

良く見ると男は進一だった。
進一は門を通り抜け式場入りする男の顔を一人ひとり確認している様子だった。

高校を卒業して以来、進一とは2年ぶりになるので、
久しぶりに話しがしたいと思ったオレは何気なく進一の方に足を向け近寄りかけると、
いきなり「ユウジ、止めとけ!」と何時になく真剣な眼差しの
勝史が腕を掴んで引き止めてきた。
進一を知らない勝史はオレがケンカでもするんじゃないかと
勘違いしている様子で、直ぐに「大丈夫、アイツは知り合いだから」と勝史に説明したが、それぐらい進一の形相は常人離れして危なかった。




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