涙の終りに ~my first love~
恥を承知で昔の仲間に電話を掛け捲った事、何度も同じ夢にうなされた日々、

聖子の一件もあって元気でいる事だけを願った事・・・

その思いがやっと報われた。

しかしあまりにも喜びが大きすぎて、午後からの作業は散々だった。
はっきり言って作業よりも時計の針の動きの方が気になっているので、
単純なミスの連発で不良品を出したり、時間ばかりを気にして歩いているから、
通路でゴミ箱を蹴飛ばして中身をバラまいたりと作業じたい全く身になってなかった。

心が通わず中々進んでくれない時計の針とつまらないミスの繰り返しで、
作業終了時間を迎える頃には二日分の作業でもこなしたかのように精神的に疲れていた。

だが精神的に疲れていたのもそこまでで、
後片付けをしタイムカード打って自分の車に乗り込む頃には軽いステップを踏んでいた。車に乗り込むと永ちゃんのウイスキコークを全開で鳴らし、
メロディに合わせて”オレ達の出会いを~”なんて大声でやっていた。

ハンドルを握りながら永ちゃんに聴き入っていると
”ストーブの灯りの前ではILOVEYOU,OKなんかも流れてたな”
なんて音楽と共に遠い過去を思い出していた。

そんな感じで気分は最高で嬉しくてたまらないんだけど、
何故かイマイチ引っかかるモノがあった。

それは昔と違ってオレ達は恋人同士じゃない、
だけど単に元カノに会うような感覚でもなかった。

うまく表現できなが昔の恋人に会って、昔話に花を咲かせてあっさり
「じゃまたね」って終わるのか? 
それとも一からやり直せる可能性を少しでも秘めて逢いに行くのかが微妙だった。

過去を振り返って”あの頃はお互いに若かったな”みたいな同窓会的ノリでは終りたくない、だけどまた交際を始めるには、真子を心から信用しきれる自信がない。

あいつにははっきり言って散々嫌な思いをさせられた。
現に終止符を打つ最大の原因が彼女にあった。

しかし悲しいかなその終止符の原因以外は、
いくら考えても裏切られた事やイヤな思いも思い出せなかった。
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