涙の終りに ~my first love~
ハーバーライト
道中オレはヒロや勝史の事、そして真子の知らない進一という男のオープンカーの話しを笑いを交えて話した。
すると窓の向こうを流れるネオンサインを見つめながら真子は
「時の流れを感じるね・・・」と話し出し、
「何で?」とオレが言うと、
「だってあの頃は自転車とかバスだったじゃん、それが今日はユウジの運転する車なんて」としんみり言った。

オレもそれはそうだなと思った。
毎晩意味なく自転車で真子の家に通ってた頃、
あの頃と同じで星の輝きは何も変わらないけど、オレ達は確実に歳を取っていた。

やがて車は星空を水面へと映し出す波止場へ辿り着き、
夜釣りを楽しんでいる人達から少し離れた所に車を止めて
サイドを引くと、オレはそのままシートを倒し両手を頭の後ろに置いた。

二人きりだ。こんな二人だけの夜を過ごせるなんて夢のようだった。

波に揺れる月を見つめながら色んな事を話していると、真子は何故か突然聖子の事を話し出した。

いきなり「あのね、聖子の事だけど・・・」とポツリ言うとひと呼吸置いて、
「私が何もしなければユウジと聖子ってうまくいってたのに、ゴメンね」と真子は下を向いて俯いたまま話した。

オレは心の中で「確かにそれはそうだな」と思っていたが、この場は真子を気遣って
「でもそれはオレが自分で考えて決めた事だから、気にすんなよ」と
運転席側の窓から夜空を見上げ彼女に背を向ける形で言った。

はっきり言って聖子の事を真子の方から話してくるのは以外だったし、オレがいくら過去の思い出話しを語ったとしても聖子の事にはふれるつもりはなかった。

少しの沈黙の後、真子は自分の背もたれをオレと同じ高さに合わせると、
「私ね、今までユウジにしたわがままと聖子の事、ずっと謝りたいと思ってたんだ。
それが今日叶ったから良かった」と真子は首を横にしてオレの方を見つめながら言った。

背もたれが同じ高さになり、真子の顔が真横にくると急に胸がときめきオレはそのままキスをしようか迷った。

だけど真子の言葉に引っかかるモノもあった。
ずっとオレに謝りたいと思っていた事、それが叶ったという事はもうオレには会わないという事なのか・・・。

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