涙の終りに ~my first love~
男の子
そしてこの日を境にオレ達は頻繁に会うようになり、仕事帰りにいつものコンビニで待ち合わせて僅かな時間でも顔を合わせるようになった。

何度か会って話しをしている内に、オレ達が別れる原因となったあのドタキャン、
その時に一緒に居た女性は真子の義理の姉さんと分かった。

早い話、真子の兄さんのお嫁さん。

何故その話しになったのかは思い出せないが、
その件は単に過去の嫌な出来事と消化していたオレはせめてもの救いはあの時に一緒に居たのが、同性の女性でよかったと思うぐらいだった。

あれが男と二人だったなら話は別。

そしてそれが義理の姉さんと知ってからは、ドタキャンじたい消せはしない嫌な過去でも
オレの中で裏切りと言えるほどの大した問題でもなくなっていた。

恋人同士のように週末なると二人で出かけるようになると、自然と勝史等もオレ達の事を知るようになり、
”ユウジは真子と復活したんだな”と思われていた。

だけど本当の意味で復活はしていない。
お互いにやり直したいなんて言葉は口にしなかったし、真子がどう思っていたのかは知らないが、オレの方はまだ手探りの状態で寄りを戻すにはまだ早いと思っていた。

頻繁に会うようになってから真子はよく姉さんの子供を連れてくるようになった。

自営を営んでいる実家で事務をしていた真子は、体調を悪くしている姉さんの子の面倒を
見ている様子だった。
もうすぐ一歳になるというその男の子はとても可愛くて、三人兄弟の末っ子として育ったオレは、小さな子を見て心から可愛いと思ったのはこの時が始めてだった。

可愛いと思うようになれば自然に世話もするようになり、ミルクを飲ませたりもした。
今でも覚えているのがミルクをやっていると、
必ず残りあと少しというところで寝てしまう。
そうするとオレは最後まで飲まそうとあの手この手で眠りを妨げようとする、
その時の睡魔と闘う子供の表情がたまらなく可愛かった。

真子に会う楽しみと子供と遊ぶ喜びも増え毎日が楽しかった。

そして子供と戯れるオレの姿を見つめる真子はいつも微笑んでいて、
その眼差しはすごく優しかった。


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