涙の終りに ~my first love~
予感の雨
この日は雨なので、真子に会うのは止めて真っ直ぐに家に帰った。
永ちゃんの音楽を聴きながら雑誌を読み、
何事もなく普通にPM.9を通過するはずだった。

そして運命の電話が鳴った。

悪い予感とか虫の知らせって本当にあると思う。
オレはこの電話が鳴った瞬間から「真子・・・」と分かっていた。

でも悪い予感って、オレ達はまだただの友達で付き合ってもいない。
なのにどんな悪い知らせがあるんだろうと、
けだるい思いで鳴り続ける電話の前までやって来た。
心の中でこの電話を取っちゃいけないと思っていても、
身体は意思と反して受話器に手を伸ばしていた。
電話に出ると相手はやはり真子だった。
電話のその声はひどく疲れ切っている様子で

「ユウジ・・・ 今すぐ会いたい・・・」と彼女は短く言った。

疲れてやつれたその声を聞いて、オレの中で悪い予感を受け止める”覚悟”みたいなものができ、いますぐ会いたいとい真子の言葉に驚く事もなく「分かった・・・」と重くブルーな声で言った。

車に乗ると、雨は激しさを増していた。
すぐに真子の家の前に辿り着くと、玄関先で待っていた彼女を車に乗せた。
取りあえずオレは「雨すごいね・・・」と言い国道に車を走らせたが、
彼女は無言のままだった。

あてもなく車を走らせたが俯いたままの真子は無言のままだった。
重苦しい時間が流れる車内で、ブラックキャッツの音楽だけが低く流れていた。
彼女が胸に秘めている事、
それはオレを酷く傷付けるとんでもない事なのは分かっている、
でもそれを早く言ってくれないと沈黙のままその瞬間を待つ身では気が狂いそうだった。
視界を遮る激しい雨、忙しく動くワイパー、アクセルを強く踏み込み何台もの車を抜いた・・・。
そして「このままじゃ息苦しくてダメだ・・・」と思ったオレは
車が信号停止した時に「準備は出来ている、何でもいいから話して」と
真っ直ぐ前を見つめながら言った。

すると真子は両手で自分の顔を隠してしまい、小刻みに背中を振るわせながら泣いていた。
そして信号が青に変わり、アクセルを踏んだ瞬間彼女の唇が動いた。

「ユウジごめん! あの子あたしの子なの、もうこれ以上隠せない!」

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