涙の終りに ~my first love~
レイニー・ウェイ
少しの沈黙の後、真子は最後にオレが子供に会った日の事を話し出した。

「あの時、家の前で私が子供を抱いて待っているとユウジが来た。
するとあの子はユウジを見つけると自分から身を乗り出してユウジの方に行こうとした。私それでもう本当の事を言わなきゃいけないと思ったの」と言った。

黙ってその話を聞いていたけど、パニック状態のオレには何を言ってもムダで
瞼に熱い何かが込み上げていた。
やがて車は真子を乗せた場所に戻って来た。
静かに車を止めるとオレは運転席のパワーウインドを降ろし、
黒いスクリーンからとめどなく落ちてくる雨を見上げながら
「気をつけて帰って」と言った。
彼女の家は目の前にあるのに気をつけてって場違いな言葉だった。

そして「濡れないように、風邪引くよ」とだけなんとか口に出して言うと、
もう助手席の彼女を見れなかった。

多分この時真子はオレの背中をずっと見つめていたんだと思う。
だけど涙を流さないように必死のオレは、真子の方を振り向く余裕がなかった。
悲しみという冷たい時間が二人を包み、やがて助手席のドアが静かに開くと、
どしゃぶりの雨音と共に真子は降りて行った。

さよならも何もなかった・・・。

彼女がいなくなり、車内で一人になると我慢していた涙が頬を流れた。

そのままゆっくり車を走らせると涙が溢れ出し運転がしずらくなった。
オレは泣いている事を対向車や他のドライバーに知られたくないので
夜なのにサングラスをかけた。

黒いサングラスの下をとめどなく涙が流れ、オレは自分が何故泣いているのか分からなかった。

この涙は悔しいからなのか? 

それとも悲しくて?

いくら考えても答えは出ず、ただひたすら涙を隠しながら運転をした。

家に帰り一人になるとやっと真子の言った言葉のすべてを理解し

”オレって馬鹿だな”と思った。
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