[短]6月の第2ボタン
『知っている』麻人は、遠慮という言葉を知らないかのように言う。
だからと行って、傷がえぐられたりするわけでもないが、
この話であまりいい気分にはならない。
忘れられるわけがない。
「そろそろ忘れてやったらどうだ?」
忘れることが善なのか。
「…みんなかわいそうだよ」
忘れないことが罪なのか。
考えても考えても導き出せない答えだからこそ、
もがく、さまよう、遠回りする、
間違って繰り返して、何度も何度もやり直して。
「…この第2ボタンは、あいつにやるために誰にもやらないんだ」
忘れ形見。
彼女がいないことを認めないように。
第2ボタンをつけていれば、また、彼女に会える。
そう信じて疑わなかった、あの頃の僕。