赤りんご





彩花が担任に呼び出されて職員室から教室に戻る途中、トイレの前を通った。




喧嘩っぽい怒鳴り声が私の声に似ていたんだけど、気のせいだと思って通りすぎたらしい。



別人だと思って、教室に戻ると私はいなくて…


事情を何となく察した亮太と彩花が助けに来てくれたんだって。



彩花には感謝しなくちゃ…


彩花が気付かなかったら…私、何されてたか分からない。



そう思うとぞっとした。




「もうこんな思いさせねえから…」



「ありがとう…あの人たち、どうなってるのかな…」


「健太と鈴木がいたら大丈夫だろ、鈴木は迫力があるからな!」



亮太の言葉に思わず笑ってしまった。



「ゴメンね、私弱くて…」



しゅんとした私の顔を見て、亮太はもう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。



「お前は強くならなくていい…俺が守るから」



「…嬉しい…でも私、あの人に言い返したんだよ!」


笑顔で見上げると、亮太はニコッと笑って頭を撫でてくれた。



「そうか!偉いな…でも俺が守るから無理はするな、な?」



「うん!」



やっと二人して笑顔になれた。



最悪な日だったけど、私にとっては大きな一日になった。





< 151 / 215 >

この作品をシェア

pagetop