赤りんご




あれ…?



席につこうとするけど、席は二つ空いている。




窓際の端と、その隣。



どうしたらいいんだろう。





「あの〜…」



私の小さな声に担任は気付いてくれた。




「あ!廣瀬さん端から二番目の席に座ってね!」



「…はい」



優しい目をした担任に、何となく救われた気がした。





「また水嶋遅刻〜?」



担任の呆れたような声が響く。





窓際の一番後ろ…



水嶋…さん?


よく遅刻するんだ…。





席に着いて小さくため息をついた。




恥ずかしかったあ…



人前に立つのでさえ苦手なのに、自己紹介なんて……



絶対に無理だと思ったけど、


まあでも…よく頑張ったかな。





「廣瀬さん!!」



「は、はい!?」



前の座席の女の子が急に振り返るので、声が裏返ってしまった。




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