アスファルトに咲け!



あたし達が談笑していると教室の扉が開き、羽柴先生が入って来た。相変わらず直す気すら感じ取れない寝癖をつけて。



「朝っぱらからギャーギャーギャーギャー、動物園かここは。俺低血圧なんだから気ィ遣えよ」




生徒達は皆、自分の席に戻る。これから朝のHRが始まるのだ。教卓の前に立った先生に、有無を言わさずといったように出席簿を渡される。




「今日も宜しく、小町」



何故か初日に出席をとらされて以来、これはあたしの仕事になってしまったようだ。




「毎日毎日出席とらせて…先生あたしのことなんだと思ってるんですか?」

「え?メイド?」

「“え?”じゃないし」



この人の捉えどころのないノリには未だに慣れない…というより慣れたら終わりな気がする。




気を取り直してあたしは出席簿を捲った。出席番号1番の生徒の名前から順に呼べばすぐに返事が返って来る。



ある1人を除いては。





「──大神 聖夜(オオガミ セイヤ)」




あたしは名前を呼びながら右隣の席を見る。名前の主の席は今日も空席だ。



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