中曽根工業高校
伊澄の脳裏に、キノの顔が浮かんだ。

(そういえば…)

「この間の時、木下くんが追いかけてったけど…」

「え?」

突然の質問に、りょうは顔をきょとんとさせた。

「…会わなかった?」

「ああ、日和?会ったよ。話さなかったけど」

「…よかった。大分、心配してたみたいだよ」

(下の名前で呼んでるんだ……)

「別にあいつに心配されたところで…」

りょうは少しふてくされた表情を見せた。

「嫌だ?」

「嫌ってゆーか…いい加減、ほっといてほしい!」

「そっか…」

(しかし…………相当、うざがってる感じだな…)

「りょう、彼氏と別れた」

「へっ?」

いきなりのカミングアウトに伊澄は間の抜けた声を上げた。

「フラれた。りょうといると…疲れるんだって」

「そうなの…」

「なんかさ、理由が冷たいとかならまだ修正ききそうだけど…うっとおしいとか重いとか言われたらどうしようもないよね。じゃあ軽くなりますとも言えないし…」

おそらく、この間の電話の彼氏の事だろう。

「そんな事言われたの?」

「うん」
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