one contract

「待ってアオちゃん!ボクも行くっ!!」

ボクは慌ててアオちゃんを追いかけた。

「んじゃ、俺らも行くか」
「待って、紅」
「あ?」
「2人にさせてあげよう? ‥菫と会長は、ちゃんと話して決着付けないとダメだよ」
「‥そうだな。なんだかんだ言って、アイツが一番今の事心配してたし‥」
「うん。‥ふふ、なんか思い出しちゃった」
「ああ?」
「‥‥紅と出会ってからの事‥」
「は、恥ずかしい事言ってんじゃねぇよ‥」





「「‥‥‥」」

なんだか気まずい。
凄く、気まずい。

隣を歩いているアオちゃんはずっと俯いたままで。
時折見せる表情が悲しい様な、辛い様な顔。
それを見たボクは心臓が何かに掴まれた様に苦しくなって、切ない気持ちになった。

ねぇ、どうしてそんな顔するの?

気付けば生徒会室の前。
授業中という事もあるのか、そっと扉を開けたアオちゃんはボクを先に中へ入れた。
ボクはいつも通りの場所に腰をかける。
アオちゃんは何も言わずに紅茶を淹れて、ボクの前に差し出した。
それは、此処に来るといつも飲んでいた紅茶。

「‥‥コレ、飲むの久しぶりだね」
「そうだね」

短く返事を返したアオちゃんも、いつも通りにボクの隣に座った。

「アオちゃんは、何か飲まないの?」
「‥うん、僕はいいよ。」

微笑みかけてきたアオちゃんの笑顔に違和感があったのは、言うまでもなかった。
そしてボクとアオちゃんの視線がぶつかる。
まるで蜘蛛の巣に引っ掛かった逃げ場を失った蝶の様に、視線がアオちゃんに捕らわれる。

もう、いい。

ボクはどうなってもいいから、
どう思われたっていいから‥‥。

ボクのコト、受け入れてよ。
‥‥アオちゃん。

ボクの中に、今まで我慢してきた感情が溢れてくる。

「じゃあ‥‥ボクの、飲む?」

ボクはするりとアオちゃんの首に腕を回して、膝の上に乗る様な形になる。

「‥‥スミ、レ‥?」

ボクの突然の行動に驚くアオちゃん。
当然だよね。
いつも先に触れてくるのはアオちゃんだったもん。
ボクは、頭の中に浮き上がってくる感情を一つ一つ、言葉にした。

アオちゃんに、ちゃんと伝わるようにと。
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