楽天家の願い事
――僕の最後の願いは……

これが彼の最後の言葉だった。

それが遂に彼の口から聞けなかったため、私は今さまようはめになっている。

私が今ここに存在することは、何のために誰のためにかわからぬまま戦場に赴く戦士のようなものだ。

なぜ、人を傷つけ自分も傷つかねばならないのかわからない。しかし戦わなければならない。

もしくは、不本意な旅を強いられている冒険家かもしれない。「いきたくない」と懇願しつつも、圧倒的な力により歩みを進めなければならない。

しかも、行き着いた先には人間を狂わせるお宝も、更なる可能性を覗かせる新境地もない。
ただの見飽きた世界があるだけだ。


それならば彼の最後の願いを聞けたなら、私は解放されたのかと問われれば、私は首を横に振ることしかできない。

私は解放などされない。そんな望みは持ってはいけない。

そもそも私は「望み」を持つことを望むことすら許されない。

私は「望み」を叶える方の立場だ。
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