『花、愛でる人』
「蓮(れん)」
「えっ?」
「苑田 蓮です」
ふわっと笑った彼、蓮がわたしにこう答えた。
蓮……。
目の前の彼に、ピッタリの名前が頭の中一杯に広がっていく。
ちょっと口元が緩んでしまう。
そんなマヌケな自分の顔が容易に想像出来る。
それを隠そうと視線を動かしたら、
「キミは?」
蓮の問いかけですぐに視線は戻され、
「夢梨(ゆり)っ。相葉 夢梨……ですっ」
やたら力んだ声で答えたわたし。
「……純潔、無垢」
「えっ?」
「ううん。ピッタリだなって」
引きかけていた頬の赤が見事に復活した……。
しかも、倍増して。
百合の花のようにおしとやか……からはかけ離れたわたしなのに……。
「夢梨」
「はいっ」
「アガパンサスの花言葉、知ってる?」
きょとんと蓮を見つめ続けるわたしに歩み寄り、
彼はそっと呟いた。
アガパンサスの花言葉。
『恋の訪れ』