another contract
此処に来たのは、8歳の時だった。
最愛の両親を事故で無くして、私と妹は2人きりになった。
引き取ってくれる親族はいなくて、困っていた時にやって来たのが紅のお父さん‥旦那さんだった。
私が吸血鬼にとって“特別”な存在だと判明して、私を引き取ってくれる事になった。
でも、妹は“特別”な存在じゃないから引き取ってもらえなくて‥。
だから私を引き取る代わりに、妹を引き取ってくれる人を探す事とそれまで一緒にいさせてもらう事を条件に、この家にやってきた。
その条件を出して一週間も経たないうちに、妹の引き取り先が見つかった。
たった1人の家族。
たった1人の姉妹と別れる事になったけれど、私は涙を堪えた。
『会おうと思えばいつでも会える、大丈夫だから』
そう言って、泣いている妹の背中を押したんだっけ。
此処の家に引き取られたものの、私は此処の家の家族になったわけではなかった。
旦那さんの配慮か何かは知らないけど、姓も名のそのまま。
ただ、此処に住んでいるというだけ。
けれども、その方が私にとっては嬉しかった。
親から受け継いだ姓は、いつかは変わってしまうけど‥
当時の私が、唯一、両親を感じれるものが姓だった。
それが私たち4人の家族が存在していたという証。
それが残るのが酷く嬉しかった。
そして、此処に来てからちょっとして
旦那さんの奥さんが亡くなった。
とても綺麗で、優しくて。
ある意味、憧れの人だった。
でも、亡くなったその姿は‥
骨と皮だけの様な姿、年老いた様な姿だった。
その時、ずっとずっと奥さんを眺めていた男の子がいた。
紅い目に、いっぱいの、溢れそうな涙を溜めて。
あれは‥、紅さんだったのかな。