Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
「いらっしゃい」

お客がきたのか、芯が言った。

会社勤めの男だった。

年齢(トシ)は、30過ぎていそうだ。

と言うか、過ぎていても、おかしくない。

高そうなグレーのスーツに躰を包んだその人は、あたしの隣に座った。

「あれ?

今日はきたんですか?」

知り合いなのか、芯がその人に声をかけた。

「まあ、たまには顔を出した方がいいだろ?」

その人は冗談を言うように笑った。

こう言う人のことを、世間では“男前”って言うんだろうな。

はっきりとした整った顔立ちが、特徴的だった。

酔っぱらいになっているあたしでもわかるほどの、はっきりとしたキレイな顔立ちだ。

つい、見惚れてしまった。

「新婚さんですもんね、中沢さん」

芯がその人、中沢さんにカクテルを出した。

甘そうな色をした、ピンクのカクテル。

人は見かけに寄らないって、まさにこう言う意味なのね。

と言うか、結婚してるんだな。

ま、たいていのいい男は彼女持ちあるいは既婚者なんだけど。
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