Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
「…えっ…?」

かすれた声。

芯が、あたしを好き…?

「じょ…」

「冗談を言わないで、そう言いたいんでしょ?」

ズキッと、胸が痛んだ。

「俺の告白も、雪ちゃんは冗談の対象に入るもんね」

悲しそうに言う芯に対して、あたしは何も言えない。

沈黙。

先に沈黙を破ったのは、あたしの方からだった。

「…あたし…もう、帰るね……」

飲みかけのグラスにお金を置くと、あたしは店を出た。

店を出るまでの間、悲しそうな目で、あたしの背中を見る芯の視線が痛かった。


気のせいじゃなかったんだと、あたしは思った。

中沢さんを追いかけようと店を飛び出した時に、あたしを呼び止めようとした声。

中沢さんと話している時に見ていた目。

あたしだけにたたかれる憎まれ口。

あれ、気のせいじゃなかったんだ。

店にくる客全員に、やっている訳じゃなかったんだ。

“飲み過ぎ”だと言って注意するのも、あたし以外の客にもやっているんだと思った。

あたし、バカだよ…。

今頃芯の気持ちに、気がつくなんて。
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