Bitter Love〜苦くて切ない恋〜
「そう言ってくれて、嬉しいよ」

中沢さんの笑顔が、涙でぼやける。

「雪ちゃん。

本当に、幸せになってね」

あたしはうなずいた。

「…中沢さんも…幸せになって、ください…」

泣きながら、あたしは言った。

中沢さんはわかったと言うように微笑んでうなずくと、キスをくれた。

唇に、温かい感触が触れる。

それは、あたしが大好きな、中沢さんの優しいキスだった。


泣くのをやめると、あたしは家を出た。

中沢さんが見送りしなかったのは、あたしに対しての気持ちを消すためだったのだろう。

あたしに対しての、恋愛感情を。

彼なりの、やり方。

中沢さんらしいと、あたしは思った。

本当に、彼らしいと。

だからあたしも、中沢さんに対しての気持ちを消すために、閉めたドアに向かって、心の中で言った。

――さようなら、あたしが愛した人。

そのドアが、もう開くことはなかった。


☆★END☆★
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