FAKE‐LAKE
「何か、飲むものいる?」

「じゃあ……水を」

パタパタと階段を下りていくレイの足音を聞きながら、アンジェはゆっくり息をつく。目をつぶると浮かぶ夢の残像。

いいや、違う。アンジェは一人首を振った。

夢じゃない。思い出してきてるんだ。せき止められていた水が流れ込むように一気に記憶が戻っていく。

『独りが、怖い』

昨日レイの言葉を聞いてから、一晩中フラッシュバックのように昔の事を思い出している。そう、“独り”になる前の事を。

熱が出ているのはそのせいだ、とアンジェは思う。本当にそうかは分からないけれど。

「思い出したくないのに……」

どうして忘れていたのかは分からない。ただ言えるのは、レイに出会った事で記憶にかけられていた鍵が徐々に開き始めていた事。

そして、その“過去”から自分は逃げられないという事だ。

ああ、頭が痛い。左腕が疼く。

『――おじさん、どうして僕の左腕にはこんな模様があるの?』

ひどくなる頭痛に小さく呻き、アンジェは枕に顔を埋めた。そのまま、また眠りに落ちる。

夢の中で、彼は今まで忘れていた――“興味がない”と逃げていた自分の“過去”の中をさ迷っていた。


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