FAKE‐LAKE
「ほら、元気出して」
 アンジェは蜂蜜入りの紅茶をレイに差し出した。ほんのり甘い香りが漂う。
「……ありがとアンジェ」
 レイは白いカップを受け取り、口をつけた。甘い。美味しい。
 ゆらゆらと揺れる温かい湯気越しに、自分用の紅茶をいれているアンジェの後ろ姿をじっと見つめる。
 ……アンジェ、気づかなかったんだ。
 レイは心の中で呟いた。
 アンジェは、手が滑って落としたのでコップが割れたと思っている。しかし、レイはそうではない事に気がついていた。
 受け取った時に手がビリ、と痺れるような感覚があり、落とす前にコップが割れたこと。
 スローモーションのように目に焼き付いた、ガラスがはじける光景。
 ……怖い。
 博士の言葉が蘇る。
『お前は特殊なんだ』
『何かあるはず』
 その言葉を肯定する何かが自分の中にある気がしてレイの心が暗く沈んだ。
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