FAKE‐LAKE
「アンジェ!」
 ニールは倒れているアンジェに慌てて駆け寄り、抱き起こす。意識はあるらしく、ニールを見つけた大きな目がゆっくり瞬きをした。
「……ニール」
 アンジェはほっとしたように力無く笑う。
「どうした? 大丈夫か? また調子悪くなったのか? どこか痛いか?」
「しばらくじっとしてれば……薬飲めば多分大丈夫」
 矢継ぎ早なニールの問いに答えて体を起こしたアンジェは、少し離れた所にいるレイに気がついた。
 不安そうに両手を胸の前で握りしめている。涙をいっぱい溜めた瞳は、日の光の下で見るとまるで黄緑色の宝石のようだ。
「……大丈夫だよ、レイ」
 アンジェの優しい声にレイの表情がみるみる歪んだ。大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
「あ、おい!」
 手をのばしたアンジェに背を向け、ニールの呼びかけも無視してレイは家の中に駆け込んだ。
 ――怖い。……怖い!
 屋根裏部屋に閉じこもり、部屋の隅で震えていた。不安と恐怖で呼吸が乱れる。
 僕はやっぱり“特殊”なんだ。持っている“何か”で、知らずに人を殺してしまうかもしれない。
 アンジェが倒れる様子が頭の中で何度も何度も繰り返される。
『自分』という存在が恐ろしくなって、レイはその場から動けなくなった。
< 130 / 426 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop