FAKE‐LAKE
暖炉に少し火が残っていた。まだ暖かい。その前に膝を抱えて座る。

三人で過ごす楽しい時間。自分たちの秘密を忘れられる幸せな時。

でもその時間が楽しければ楽しいほど、みんなが寝静まる夜が来ると不安になるのだ。

「バカだな、僕は」

ぽつり、呟いてみる。

何か理由がある訳ではない。流れる時間は穏やかで、幸せで。

考えすぎだと思う。取り越し苦労だと思う。

でも、なぜか不安に駆られる。

いつか夢から醒めるように、独りだったあの日に戻ってしまう気がして。

薄雲が風に流されていくように、いつかこの幸せがはかなく消えてしまう気がして。

考えただけで胸が苦しくなる。

「……もう、独りになりたくない」

消えかかっている赤い火を見つめて、アンジェは小さく息をついた。


< 172 / 512 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop