FAKE‐LAKE
「そうか……」

手品が一つ終わる度に子ども達の歓声と拍手が響く。

「ねぇ、アル。“夜空”の手品のやり方教えて」

一番年上の男の子がアルにお願いする。時々しか見せない“夜空”の手品は子ども達にすごく好評だった。

お願いお願い、とすがられ、アルはちょっと困ったような笑みを浮かべる。

「あれはね、駄目なんだ。あの種明かししたら、僕明日から食べてけなくなっちゃう」

ごめんね、と謝り、アルは違う手品の道具を取り出した。

「代わりにこれ教えてあげるね。まず、このリングを――」

手取り足取り教えているうちに、興味を持った他の宿泊客も周りに集まりはじめた。

手品を披露したり、教えたり。

その晩、アルは沢山の笑顔の中心にいた。彼の周りに集まるみんなが笑顔になる。

「アルの一番得意な手品はみんなを笑顔にする事なのね、きっと」

「そうだな」

奥さんは肩で溜息をついた。

「明日から寂しくなるわね……」

また来年来るからね、と子ども達と約束しているアルは、そこにいる誰よりも幸せそうな顔をしていた。


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