FAKE‐LAKE
「……ただ」

レイは割れたカップのかけらを一つ一つ拾い集めながら言葉を続ける。

「それ以外にあなたに言いたい事が出来たから、僕はここに来たんだ」

博士は顔をあげた。復讐に来たのでないなら、レイは一体何を伝えに来たのだろう。

すっ、とレイは窓の外に目を向けて話し出した。

「……歩けるようになるまで二年かかった」

博士の胸がズキ、と痛む。

「言葉をきちんと話せるようになるまでは三年、記憶が戻るまでは四年」

今もまだ完全な記憶じゃない、とレイは淡々とした口調で話し続ける。

「毎晩虐待される夢を見て、眠るのが怖かった。その恐怖から逃げたくて何度も手首を切った」

レイは目を伏せた。左手首のリストバンドは傷を隠すためにつけている。もう二度と切るなと言ってアツキがくれたものだ。

「そばにいて助けてくれた人たちのおかげで、僕は死なずにすんだ。沢山の人に助けられてやっと笑えるように、生きようと思えるようになった」

博士はレイから目を離せずに黙って聞いていた。


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