FAKE‐LAKE
この家に戻って一年後くらいからアンジェは変わった。

自活していくために描いた絵をどこかで売れないかと聞かれた時、ニールはものすごく驚いた。

「おじさんが今までしてくれた事に少しずつお返ししたいし。自分の生活費もニールの配達運賃も自分で払いたいし」

かと言って街に下りて働くほど体力無いしさ、とアンジェは溜息をつく。

「僕、絵しか取り柄ないから」

それからニールが一週間に一度、市でアンジェの絵を売りはじめた。彼の描いた優しい色使いの風景画、落ち着いた色合いの静物画は様々な年齢の人に好評だった。

口コミで噂が広まり、数年が経った今ではアンジェの絵を目当てに市に来る人も多い。

ニールがひがむように、アンジェ自身に関心を持つ女性も少なくないが、アンジェは人前に一切姿を見せなかった。

ニールがしつこくすすめても恥ずかしいと断る。本当に恥ずかしいのだから仕方が無い。

それがかえって“謎めいた魅力”に拍車をかけたのだろう、『アレン・ウェッジウッド』はリアレスクの街でちょっとした有名人になっていた。


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