FAKE‐LAKE
突然の事に一瞬息が止まる。過去の恐怖が鮮やかによみがえって来る。

逃げようともがく彼の耳に、思いも寄らない言葉が聞こえてきた。

「ありがとう……レイ」

ありがとうと泣き声で何度も繰り返す博士。謝罪ではなく、心からの感謝。

体を硬くして小刻みに震えているレイに気付き、博士は慌てて離れる。

「すまない。お前の気持ちも考え……」

くるりと身をかえし、レイは白髪の男性の胸に飛び込んだ。

恐る恐る名前を呼ぶ声が微かに聞こえる。

体は虐待の恐怖を覚えていて、どうしても震えてしまう。

でも、この人は――

レイは博士の胸に顔を埋めて呟いた。

「おとう、さん」


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