FAKE‐LAKE
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「――絶対に逃げ出してやるって決めてからは、しばらく抵抗しないで大人しくしてた」
遠くを見つめたまま、レイは淡々と話し続ける。いつのまにか太陽が雲に隠れ、陽射しは弱まっていた。
「奴らが油断した隙をついて、逃げた。沢山人が追いかけてきたけど、なぜかその日は捕まらなかったんだ」
アンジェは描いている絵が途中なのも忘れてレイの話を聞いていた。
「必死で走った先が行き止まりで。捕まるくらいなら死んでやると思って、湖に飛び込んだ」
それからの事は何も覚えてないんだ。そう言ってレイは顔を上げた。
「気がついたら、ここにいた。目の前にアンジェがいて、親切にしてくれた」
アンジェは当時の事を思い出した。出会った日の様子。ひどく怯えた瞳。傷だらけの体。左腕の印――
びく、と体が無意識に反応する。
「すごく、嬉しかったんだ。アンジェが僕の事を気味悪がらずに“人”として扱っ……」
不意にレイは言葉を止めた。澄んだ瞳が潤み、頑張って作っていた笑顔が崩れた。
「あ……れ、おかしいな。嬉しいはずなのに涙、でるな……んて、あは、は」
止まらない涙を拭いながら、レイはなおも笑おうとする。
ああ。こんな時、何て言ってあげたらいいんだろう。
アンジェは自分の性格を恨めしく思った。慰めの言葉すら思い付かないなんて。出来ることなら、言葉無しに気持ちを伝えられたらいいのに。
「ごめん、ね」
レイは必死で涙を飲み込もうとする。まるで悪い事をしているかのように謝りながら。
理不尽な状況で沢山の傷を負ったレイ。想像出来ないような苦しみと痛みに耐え、それでも生きてきたレイ――
スケッチブックを脇に置き、アンジェは立ち上がった。レイの隣に座り、囁いた。
「もう、我慢しなくていいんだよ」
「――絶対に逃げ出してやるって決めてからは、しばらく抵抗しないで大人しくしてた」
遠くを見つめたまま、レイは淡々と話し続ける。いつのまにか太陽が雲に隠れ、陽射しは弱まっていた。
「奴らが油断した隙をついて、逃げた。沢山人が追いかけてきたけど、なぜかその日は捕まらなかったんだ」
アンジェは描いている絵が途中なのも忘れてレイの話を聞いていた。
「必死で走った先が行き止まりで。捕まるくらいなら死んでやると思って、湖に飛び込んだ」
それからの事は何も覚えてないんだ。そう言ってレイは顔を上げた。
「気がついたら、ここにいた。目の前にアンジェがいて、親切にしてくれた」
アンジェは当時の事を思い出した。出会った日の様子。ひどく怯えた瞳。傷だらけの体。左腕の印――
びく、と体が無意識に反応する。
「すごく、嬉しかったんだ。アンジェが僕の事を気味悪がらずに“人”として扱っ……」
不意にレイは言葉を止めた。澄んだ瞳が潤み、頑張って作っていた笑顔が崩れた。
「あ……れ、おかしいな。嬉しいはずなのに涙、でるな……んて、あは、は」
止まらない涙を拭いながら、レイはなおも笑おうとする。
ああ。こんな時、何て言ってあげたらいいんだろう。
アンジェは自分の性格を恨めしく思った。慰めの言葉すら思い付かないなんて。出来ることなら、言葉無しに気持ちを伝えられたらいいのに。
「ごめん、ね」
レイは必死で涙を飲み込もうとする。まるで悪い事をしているかのように謝りながら。
理不尽な状況で沢山の傷を負ったレイ。想像出来ないような苦しみと痛みに耐え、それでも生きてきたレイ――
スケッチブックを脇に置き、アンジェは立ち上がった。レイの隣に座り、囁いた。
「もう、我慢しなくていいんだよ」