FAKE‐LAKE
◇ ◇ ◇
シャッ、とカーテンを開ける音が聞こえた。
同時に眩しい光が顔に当たり、アツキは鬱陶しそうに腕で陽射しの攻撃をふせいだ。
「おはよ! 朝ですよ!」
明るい声が部屋に響く。
昨夜痛みのせいで眠れず寝不足なアツキは、呼びかけを無視してもぞもぞと毛布の中に潜り込んだ。
「寝ぼすけアツキさん? 起きないと注射しますよ?」
耳元をくすぐるキラキラした笑い声。いつもなら嬉しいはずの彼女の声も、今は聞きたくない。
返事をしないアツキに小さく首を傾げ、リーナは心配そうに毛布の上からそっと肩を叩いた。
「アツキ、寝てるの? もしかして具合悪い?」
放っておいてくれ。無言で返事をし、アツキは黙って寝たふりを続けた。
と、突然。
勢いよく毛布を剥ぎ取られた。
「な、にすんだよ!」
驚いたアツキが起き上がって叫ぶと、リーナは悪戯っ子のように嬉しそうに手を叩いて大成功、と笑った。
「おはよ、アツキ」
「おはよ、じゃないだろ! いきなり部屋に入ってくるなよ!」
アツキは深く溜息をついた。半分は呆れの、半分は安堵の。まともな格好で寝ていてよかった。
しかし、男の部屋に平気で入って来ていきなり毛布をめくって起こすなんて、リーナ・コーラル、お前は女だという自覚が無いのか?
――とは口にしなかった。これも惚れた弱みか。
リーナは全く悪びれた様子が無く、可愛らしく笑いながらアツキに毛布を返した。
「だって返事してくれないから。寝てるなら起こそうかと思って」
「頼むから、普通に起こしてくれよ」
アツキは再び溜息をつき、毛布を受け取ろうと手を伸ばした。その手を見て、リーナの茶色の目が驚いたように見開かれる。
左手に巻かれたタオルには、大きな赤黒い染みが幾つもついていた。明らかに血の痕だ。
彼女の視線に気付いたアツキが手を引っ込めようとしたのと、リーナがその手を掴むのは同時だった。