FAKE‐LAKE
「……博士に追われる夢」
 レイは俯いてぽつりと答えた。
「真っ暗で先が見えなくて怖いんだ。走っても走っても逃げられなくて。捕まって、殴られて、そして」
 言葉を止め、レイはその場にうずくまった。駆け寄ったアンジェに、以前のようにしがみつく。
「あは、駄目だ。これ以上話せないや」
 大丈夫だと思ったのに、とレイは震えた声で笑う。
「話そうとしたら思い出すんだ。そして思い出したら、また独りが怖くなるから」
 ――独りが、怖い。
 アンジェの、遠い記憶の中で同じ言葉を繰り返す少年がいた。
『独りぼっちが、怖いの』
『大丈夫。ほら、おじさんがいるだろう?』
 ぼんやりとした記憶の向こうにいる誰かが、少年に向かって手を広げた。
『おいでアンジェ』
 優しい声の方に走り寄る少年は――
「……アンジェ?」
 はっと我に帰る。気が付けばレイの肩に置いた手に力が入っていた。まるでしがみつくかのように。
 ごまかすように肩をぽんと叩くアンジェの指が微かに震えている事に、レイは気付かなかった。
「落ち着いた?」
 アンジェは何もなかったような顔をして尋ねる。レイは頷き、ありがとうと小声で感謝した。そして続ける。
「ねぇアンジェ」
「何?」
 話そうか迷っているように泳いでいた視線がアンジェを真っすぐに見た。
「お願いがあるんだ」
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