喫茶ノムラへいらっしゃい!
それから、記事が書き上がるまで3日かかった。

私は、その3日間、井上のメモには全くふれなかった。



3日目、記事を書き終わると、井上がポツリとつぶやいた。

「先輩と記事書けるのも、あと1回ですね。」

その声があまりにも寂しそうで、なぜかわからないけどドキッとした。

「そうだね。3月号書いたら、ペア解消だからね。寂しいの?」

冗談っぽく井上の顔を覗き込むと、まっすぐな瞳で見つめ返された。

「寂しいですよ。」

また、胸がドキッとする。

井上にドキドキするなんて、今日の私はどうかしている。

井上の瞳から視線をそらすと、窓の外は真っ暗だった。

部室には私と井上しかいない。

「井上、もう帰ろ。外、真っ暗だよ。」

「そうですね。」

井上はぼんやりしたまま、席を立った。
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