1秒後の奇跡【超短編】
1秒後の奇跡

12月24日


PM 22:34


駅前の大きなツリーを横目に、コートのポケットの中に入れた手をギュッと握り締めた。


今年は26日の金曜日で仕事納め。


だから今週はずっと残業だった。


もう少し早く仕事が終わってさえいれば、フリーの友人とご飯にでも行けたのに。


もう今日はこのまま家に帰って寝るだけ。


そして何事もなかったかのように終わるんだ。


今年のx'masは。


なんて事を考えていたあたしを嘲笑うかのように、ヒューッと冷たい風が頬を通り抜けていく。


チカチカと光るツリーのてっぺんの星を通り越して、吸いこまれそうなほどに澄み切った夜空を見上げた。


ねえ、サンタさん?


こんな日くらい、何かすんごい奇跡が起きたってイイんじゃない?


なんて。


ある訳ないか。


< 1 / 10 >

この作品をシェア

pagetop