‐白雪姫と悪魔なアイツ‐



 薫くんは持っていた携帯を慣れた手つ
 きで操作すると、耳に押し当てて誰か
 に電話を掛けている様子。



 「――あ、もしもし」



 繋がったらしい携帯に、薫くんは立っ
 たままのあたしに視線を投げ掛けなが
 ら相手と喋っている。



 「うん。見つかった。公園来てたよ。
  んー、うん。うん、じゃな」



 どうやらあたしのことを話してたらし
 く、相手は千代ちゃんみたいだった。



 「座らないの…??」



 俯いたまま薫くんは自分の隣を指さす。



 「座る」



 本当は帰りたいけど、帰っちゃいけな
 い気がして、あたしは素直に従った。



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