音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
「なんだ、そう言う事だったのか……」


「ゴメンね、ずっと話さなくて」



やっと、言えた。


ずっと言いたかった『ゴメンね』が今、言えた。



許して貰えるか分からない。


それでもずっと謝りたかったんだ。



「ゴメンね、いっくん」


「まおが悪い訳じゃない。

俺もあの日。
駅でまおを引き留めてまおの考えを無視して散々ヒドイ事言って悪かったな。
それと、ずっとまおのとこをシカトしていたのも悪かった」


それは、いっくんが謝ることじゃない。


全ての原因はあたしにあるんだから、いっくんが悪いわけじゃないよ。


だから、謝らないで。



「あと、プリントも奪うようにしてごめんな。
怖かっただろ?」


「怖くなかった」


あれは怖くなかったよ。


ただ、苦しかった。
辛かった、切なかった。



「また“おはよ”って言ってくれる」


シカトも目が合わないのも嫌だよ。


前みたいに戻りたい。








< 208 / 557 >

この作品をシェア

pagetop