音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
その前に、誰がヘッドホンなんて使うの?


いっくんが使うのかな?



「はい、まおはここで座って待っていろ。
何か食べたい物とかあるか?」


「特にない……」


「そっか。
ちょいここに座って待ってて。
あっ、チケットとか持っていろな。

――― 絶対動くなよ」


そう睨み付けるように釘をささなくても……
わざわざ一人でこんな広いとこ歩かないよ。


迷子になりそうだし。


「絶対に動くなよ」


だから、二回も言わなくたって大丈夫だって。
そんな赤ちゃんじゃないんだから。


あたしはいっくんからチケットとヘッドホンを受け取り、いっくんがつれてきてくれた小さなテーブルの前に座った。


後ろは壁になっていて、今上映中の映画のポスターやこれから上映するポスターがズラーっと端から端まで並んでいる。








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