音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
はっ……
本気にって何?



「誰がこんな場所で“あーん”なんてするんだよ。

俺、そんな恥ずかしい事やる気無いし」


「からかったの?」


「からかった訳じゃねぇよ。
ただ“遊んだ”だけ」



遊ぶもからかうも一緒だっつーの!


またいっくんに遊ばれた。


いつも、いつもあたしで遊ぶんだから。


いっくんのバカッ。


『あーん』を信じたあたしがバカみたいじゃん。



「よし、食い終わった」


「えっ、もう!」


あたしより沢山食べているはずなのに、もう無くなっている!


手にはクシャッと丸められたホットドッグのゴミとフライドポテトのゴミ。


ゴクンッと大きくノドを鳴らしてコップの中身も空になったみたい。


あたしのミルクティーはまだ半分も残っているよ。



「お前、まだ飲んでいるんかよ。
おっせーなあ」


「飲むペースは人それぞれですよーだっ」


「まあ、いいや。
ゴミ捨ててくるからそれまでに飲んでおけよ」







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