音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
袋から中身を取り出して、パクッと。


んー、冷たい。


あたしは二つある内の一つに座って、いっくんはブランコを囲うようにある柵の上に乗っている。


柵は低いからいっくんの足が届いているんだけどね。



「なあ、まお?
俺がどうしてここに連れてきたか分かるか?」


どうしてここに連れてきたか…… そんなの、分かるわけ無いじゃん。
わざわざこんな所にどうして連れてきたの?


アイスを食べたかった…… とか、簡単な理由じゃないよね。



「何かあったんだろ?」


「…… 何も無いよ」


あたしが色々言われているのに、気付いているの?


「最近、元気無いぞ」


「暑いからじゃない?」


いっくんには知られたくないな。


色々言われていた事。
聴力が下がった事。


もし、いっくんが知ったらどうする?







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