音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
あたしは割りとカッコいい『幼なじみ』がいて、ちょっと嬉しいんだよね。


「ねえ、どんな子?」


「まおには“ぜってー”教えないから」


「ケチッ!」


「ケチで結構。
ほら、帰るぞ」


一足早くブランコから立ち上がり、あたしの前に立った。


スッと手を差し出してきたので、軽く手を置いた。



「ねえー、年がいくつか位教えてよ」


「誰がまおみたいなやつに教えるかよ」


いいじゃん、あたしに教えてくれたって。
もしかしたら何か協力とか出来るかもしれないじゃん。


「いっくーん」


「秘密だって」


あたしの前を歩くいっくんの長い影を追い掛ける。


いっくんは片想い中なんだ。


いっくんのその片想い。
いつかその人に届けば嬉しいな。


普段は意地悪ないっくんでも。
ちゃんと優しいし、気が効くから。


絶対に彼女を大切にしてくれるはずだ。





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