音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
理央ちゃんの許可が降りていないけど。
ゆっくりベットまで歩みを進め、ストンと腰を下ろした。



「あのね……」


「誰も“入っていい”なんて言っていないじゃん!」


机に向かっていて、あたしには顔が見えない。


でも…… 後ろ姿だけで、伝わる。


――― 入って来ないで。
――― 一人にして。


分かっているんだけど。


「いっくんに…… 全部、聞いたから」


ピクッと理央ちゃんが揺れた。


「先週、何があったかも。
全部…… 全部、聞いたの」


あたし、バカだけど。
これだけは言えるような気がする。



「理央ちゃんがいっくんをスキだった……」


人は誰を好きになっても構わない。
好きって気付いたらもう止められないんだ……


「あたしをバカにしに来たの?」


「違う!」


理央ちゃんはあたしを一切見ない。
背中しかわからない……






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