音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~




やっぱりまだ、具合が悪いのかな?

特に耳以外は、気になる所はないけど……。

――― 病み上がりだから、しょうがないか。

後でさっきの男子に謝っておいた方がいいな。


「まーお?」


満面の笑みを浮かべ、優ちゃんがあたしの前の席に腰かける。


「なーに?」


「“これ”欲しくない?」


優ちゃんが効果音がつきそうなくらい楽しそうに、見せてきたモノ。


「めっちゃ欲しいです! ください、ください!」


「しょーがない。 親友の頼みだ、あげよう」


「ありがとうございますっ!」


優ちゃんがくれたモノ。 それは、昨日の授業のノート。

後で借りようって思っていたけど、こうしてノートを取ってくれていてラッキー!


「はーい、席ついて」


そんなとき、担任が入ってきた。


散らばっていた生徒が自分の席に着き始め、あたしの隣の男子も席に着いた。


先生の目を盗むように、こっそり話しかける。


「さっき、ずっと名前呼んでくれたんだよね。 …… ゴメンね、気付かなくて」


「別に。 俺も強く言って、悪かったし……」


良かった、謝ったら許してくれた。 雰囲気が悪いままじゃ、これからの授業がやりにくくなる。

仲直りできて、よかった―――。




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